第6章 旅立ちの時
2人を見送り、城に戻ったミーウは海に出る準備をしていた。
「なあ、ミーウ。本当に海に出るのか?」
「うん」
ミーウは服を大きい鞄に詰め込みながら、ミシュラと話をしていた。
「船は?」
「海軍の船を使えばいいでしょう? 小さめのを」
ミーウは淡々と答える。
「……盗むつもりか?」
「ううん。貰うの」
ミーウは当たり前とでも言うような顔をしているが……ミシュラは貰うのではなく、「これ借りまーす」とでも言って盗むつもりだと思っていた。
ミシュラはじとーと目を細めた。
「クザンが許すと思うか?」
「……」
ミーウは苦笑いを浮かべた。
「クザンには言えないよ。お母様にも。海兵の誰かに頼むよ」
ミシュラはさらに目を細めた。
「海軍が海賊になるような人間に手を貸すと思うか? そんなことがセンゴクにバレたら、ミーウのためとは言ってもお前に手を貸した海兵がどうなるか……わかってるだろ?」
「……」
「それに……そんなことをしたら、他の天竜人と何も変わらないぞ?」
「……」
ーーいくら海賊になるとは言っても、ミーウはどこにでもいるような普通の少女なのだ。海兵の誰かを犠牲にしてまで、船を盗むなんてことを実行できるような性格ではない。それに、“天竜人と一緒”という言葉には過敏に反応するため、そのようなことを言われたらどんなに些細なことだろうと絶対にやらない。
ミーウは完全に黙ってしまった。