第56章 天竜人と8人目の新たな仲間
「……なるほどな。分かった」
ミシュラはミーウの意図を汲み取って頷いた。ーーそれは、彼の背中にある『天駆ける竜の蹄』を隠すためだ。奴隷だったことの証、人間以下の称号……それが分かる状態でいたくないだろうという気遣いだ。
「ちょっと待て」
後ろからショウラが声を掛け、男の肩に自分の上着をかけた。しかし、袖を通すのは難しそうだった。ーーショウラとスレイジは身長は高くて筋肉もついているが、2人共どちらかと言うと細身だった。それに比べて、トーダは肩幅も広くて筋肉質だ。男の体型に近い。
「サイズはトーダの物を借りた方が良さそうだな。まあ……ないよりはマシだろ」
「あ、ありがとうございます……」
いつもはクールなショウラが少し微笑んだ。
「敬語は使うな。仲間なんだからな」
ショウラはミシュラを見た。
「それじゃあ、よろしくな」
「ああ」
ミシュラはミーウを見上げた。
「行って来る」
「うん、お願いね」
ミシュラは男の中に歩み寄った。そして、風が男と狼を取り囲んだかと思うと光と共に消えた。ーー船に移動したのだ。
2人を見送ると、ミーウはアユナとショウラと共に席へと戻った。会場内は静まり返っている。