第5章 重なる心と別れ
「キッド、準備できたか?」
「あァ」
キッドとキラーは船に荷物を積み始めた。ーー船は近くに住んでいる船大工の優しい親父さんから貰ったものだ。その親父さんは孤児だったキッドとキラーの面倒をよく見てくれた。
「この家とも……もう、お別れだな」
キッドは自分が住んでいた家を振り返った。ーー町外れにある小さな家。そこにずっとキラーと2人で住んでいた。
(それに……あいつらとも……)
「昨日までのことなのに、懐かしい気がするな」
「違いない」
キッドは小高い丘の上に立っている大楠を見つめた。ーーあの場所でミーウと初めて会った。
ーー10年前のある日、ミーウは1人で寂しそうに丘の上から海を見ていた。
(最近、よくここにいる奴だな……)
キッドもキラーと喧嘩をして家を出て来たため、退屈していた。キッドはミーウに近付いた。
ーなァ、おれと一緒に遊ばねェか?
ーいいの?
ーあァ。
その時、ミーウは本当に嬉しそうに笑った。ーーキッドはそれが天使の微笑みにも見えた……。
キッドは目を細め、それから吹っ切った様にキラーを見た。
「行こうぜ、キラー」
「ああ」