第41章 思い出せない記憶
お会計も終わり、コック達にも許してもらった後、ミーウとエースは再び街を歩き始めた。
「お、なァ、ミーウ」
エースは何かを見つけたのか、隣を歩いていたミーウの腕を引いた。
「何?」
ミーウは少し呆れた様子で、目を細めて聞いた。
「この店、入らねェか?」
エースが指差したお店は少し古びた写真館だった。お店の看板には『撮ってすぐに現像できる』『大切な思い出をアクセサリーにしませんか?』などと手書きで書かれていた。
「写真……」
ーー昔、祖母のシェルミーと一緒に撮ってもらった。誕生日になる度に、周りにいる誰かが電伝虫を手に持って楽しく……。ーー10歳になった日も大好きな向日葵畑に囲まれて、一緒にいた海兵に撮ってもらった。
「……」
ー思い返すと、あれから1度も撮っていない。
「ミーウ?」
隣から声を掛けられて、エースの方を向いた。エースはニカッと笑った。
「どうした? 何かあったか?」
「……いいえ、何もないわ」
ミーウは目の表面に溜まりそうになった水滴を溢さないように、何度も何度もまばたきをした。
「入る?」
「おう!」
エースは嬉しそうにミーウの手を引いて、店の中へと入って行った。
お店の中はアンティークな家具とセピア色の写真が飾ってあった。
「いらっしゃい」