第41章 思い出せない記憶
声が聞こえたと思うと、後ろから男がエースの肩を掴んだ。しかし……。
「あ、あれ?」
男の手はエースを擦り抜けてしまった。
「……どうなってんだ……?」
男は自分の手を見つめた。
「あの」
戸惑っている様子の男にミーウは声をかけた。
「お金も払わずに、逃げてしまってすみませんでした」
ミーウは頭を下げた。
「……お金は払えるのか?」
「はい」
ミーウは顔を上げた。
「わたしが払います。お店までちゃんと戻ります」
「……わかった」
コックの男は頭を掻いた。
「まあ、そっちの兄ちゃんも……ちゃんと、ご馳走様は言ってくれたしな」
ミーウはパッと明るい顔で笑った。
「但し、今回だけだぞ!」
「はい! ありがとうございます!」
ミーウはまた、にこりと笑った。
「あ、そうだ。お嬢ちゃん、これ」
「?」
コックは何かの紙をミーウに渡した。それはたくさんのメニューの名前と値段がびっしりと書かれており、尋常じゃない程の長さに伸びたレシートだった。
「びっくりして、腰を抜かす前に見せておこうと思ってな」
「……」
値段は全部で5万ベリー。とても、1人の人間が食べたとは思えない値段だった。