第36章 それぞれの旅へ
キッドとキラーは船員たちに逃げられてしまった。
「クソッ……あいつら……」
その様子を見て、ミーウとアユナはクスクスと笑った。
「楽しそうね」
「……そうか?」
ミーウはムッとしているキッドを見た。
(……キッドにも……)
ー新しい仲間ができている。
ミーウは少し寂しそうな顔をしたが、首を振って再びキッドを見た。
「それで、キッド」
ミーウは笑ったまま、キッドに聞いた。
「何を歌って欲しいの?」
ーー当たり前のことのようにミーウは聞いた。キッドは驚いた顔をした。
「また歌ってくれるのか?」
ミーウは笑ってから頷いた。
「そうだな……」
キッドは少しだけ悩み、1回頷いてから穏やかな目をして言った。
「“Love Story”ってのはどうだ? 歌えるか?」
ミーウは笑った。
「うん、いいよ」
キッドも笑った。
「よし、じゃァ、頼むぜ」
「任せてよ」
そう言うと、ミーウは目を閉じて歌い始めた。
「♪〜昔からラブストーリー〜♪」
キッドはミーウが歌っている間、前回歌ってもらった時のように穏やかな瞳でミーウを見つめていた。
「♪〜誰よりもきっと 愛しているけど
選んだこの道を 歩いてくから〜♪」
(……それにしても……)
ーいつ聞いても、いい声してやがる。ーー前回も思ったが、ミーウの歌声は本当に何も混ざっていないような純粋なものだった。
隣にいるキラーもキッドと同じ気持ちのようだった。
(本当に……)
ーお前には敵わねェな……ミーウ。