第34章 月夜の悪戯の魔法
ーーキッド海賊団と戦った日の夜、ケイトは見張りをするために甲板に出ようとしていた。戦いがあったからと言って、キッド海賊団が攻めて来ない保証など、どこにもなかったからだ。
(……誰だ?)
ーー甲板からは歌声が聞こえた。
(……アユナ……か?)
ケイトは扉を開け、甲板に出ようとした。その時……。
「キラー……」
ケイトはその場で固まってしまった。
(キラー? “殺戮武人”のことか……?)
ケイトは2人に気付かれないように、窓ガラスから外の様子を見た。ーー甲板には、アユナとキラーがいた。
(どうしてここに“殺戮武人”が……)
ケイトは腰から筆架叉を抜こうとした。しかし、2人は船を降り、どこかへ行ってしまった。
「!? アユナ!」
ケイトは慌てて船の外へ出たが、辺りには暗闇が広がっており、2人の姿を確認することはできなかった。
「……」
(アユナ……)
ケイトはただ、暗い海に響き渡る波の音を聞くだけだった。
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