第33章 それぞれの想い
その頃、アユナは船の甲板に1人で立っていた。
「……」
アユナは目を細めて、暗い夜の海を見た。
(ミーウ……)
命に別状はないと言っても、ミーウの怪我はアユナを心配させるには充分過ぎるくらいだった。ーーアユナはミーウを失うことが何よりも怖かった。
アユナは不安をかき消すように、口を開いて歌い始めた。
「♪〜限られた時の中で〜♪」
月明かりが僅かに照らす暗い海が広がる中で、アユナは小さくか細い声で歌っている。
「♪〜一人じゃないから
私がキミを守るから
あなたの笑う顔が見たいと思うから〜♪」
今も眠っている大切な人のことを想いながら、アユナは歌い続けた。
「♪〜日の光がやさしく照らしてくれる〜♪」
歌い終わって、アユナは息を吐いた。
「……アユナ」
その時、低くて落ち着く優しい声がアユナを呼んだ。アユナはその声を聞いて、驚いて振り返った。
「キラー……」
そこには、長い金色の髪の毛を風になびかせたキラーがいた。
「アユナ、少し時間いいか?」
アユナは頷いた。
キラーも頷いて、船を降りて、振り返った。
アユナはそれを見て、慌ててついて行った。
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