第32章 戦いの果てに
そう言って、ケイトはワイヤーに手を差し出した。
「あ、ああ」
ワイヤーはケイトの手を取り、立ち上がった。いささか、ケイトに傷付けられた肩の傷が痛むが……。
「……おれもすまなかった。挑発させて……」
ーーワイヤーの傷は言わば、自業自得というようなものなのだ。わざわざ、ケイトが謝ることはない。だが、ケイトは自分が未熟なためにワイヤーを傷付けたと思っているので、謝ったのだ。
「いや、別にいい」
ケイトは微笑んだ。
「……お前、そんな顔もできるんだな」
「は?」
ケイトは顔をしかめた。
「いや、気にしないでくれ」
ワイヤーは少し困ったように笑った。
「……この勝負は……おれの負けでいい」
ーどうやら……勝負の他にも、もう1つ負けたことがあるらしい……。
ケイトは目を見開いた。
「……今回の勝負は……わたしの負けだ。わたしの心が弱いから、悪魔の実の能力に体を乗っ取られるんだ。わたしはスフィンクスになった。それに……」
ワイヤーは首を振った。
「おれの方がお前よりも傷を多く負っているんだ。おれの負けだ」
「納得できないな」
ケイトは腕を組んだ。
「それに、勝負は最後までやってないんだ。そもそも、決着が着いていないのに勝ち負けを言うのはおかしいだろう」