第16章 船の思い出
「おばあ様、これから北の海のどこへ行くんですか?」
ミーウは隣にいるシェルミーを見上げて聞いた。
「うーんとね、北の海に行く前に寄るところがあるの」
「寄るところ?」
「ええ、そこに行った後に……」
「その必要はないぞ」
シェルミーが話している言葉を遮って、後ろから男が声を掛けた。
「センゴクのおじいちゃん!」
ミーウは振り返ってその人物を確認すると、駆け寄って抱き付いた。
「あはは、ミーウ! 元気だったか?」
デレデレとだらしなく顔を伸ばしたセンゴクがミーウを抱き上げた。
「うん! 元気だったよ!」
「そうかそうか! それは良かった!」
ミーウの小さい頭を撫でてセンゴクは笑った。
「どうしたのよ、センゴク。これからあなたを迎えに行こうと思ってたのに」
「ちょうど、すぐ近くに用事があったから来たんだ」
「連絡くらいくれてもよかったじゃない」
抱き上げたミーウの顔を見て、センゴクはニカッと歯を見せて笑った。
「内緒にしておいた方がミーウが喜んでくれると思ったんだ」
「……まあ、別にいいけど」
シェルミーは腰に手を当てて微笑んだ。
(本当に甘いんだから……)
ー自分と血の繋がっていないミーウをセンゴクはとても可愛がってくれていた。それはシェルミーにとっても、悪いことではなかった。