第14章 君の温もり
ー意外と寂しいな。
「!」
ーまただ。
キッドはグラスを右手で持ち、再び立ち上がった。
「……」
ーこの前と同じだ。ミーウの声が聞こえてくる。
(おれを……想ってるのか……?)
キッドは甲板の柵に左手を置いた。そして、三日月が映っている海を見つめた。
ー♪〜ずっと一緒にいた 二人で歩いた一本道〜♪
(歌、か?)
ーこの曲は……確か……。
「“三日月”……?」
ー♪〜二つに分かれて 別々の方歩いてく〜♪
「……」
(相変わらず綺麗な歌声してやがる)
キッドは島で聞いたミーウの歌声を思い出して口元を緩めた。
ー♪〜寂しさで溢れたこの胸かかえて〜♪
(寂しいのか?)
ー♪〜あなたを想った……〜♪
「……誰を想ってやがる。ミーウ」
ーーその声は誰の耳にも届かず、暗い海に吸い込まれた……。
ー♪〜君がいない夜だって
そうno more cry もう泣かないよ
がんばっているからねって 強くなるからねって
君も見ているだろう
この消えそうな三日月
つながっているからねって 愛してるからねって〜♪
「……」
ー♪〜三日月に手をのばした 君に届けこの想い〜♪
ミーウの切ない歌声がキッドの中で木霊する。
「……フンッ」
キッドは笑った。