第10章 あなたのためなら
4年前のある日、竜国島の大楠の下で4人は楽しそうに話をしていた。ーー当時、ミーウ13歳、アユナ15歳、キッド17歳、キラー21歳のことだった。
「その泥棒スゲェんだぜ! 海兵が追いかけて来たら、屋根の上を走り始めたんだ!」
「え!? そんなことしたの!? その人、本当に能力者じゃなかったの?」
「おれが見た限りだと普通の人間だった!」
キッドがミーウに前日、街で起こった事件の話を身振り手振りで教えていた。
「おれもあんなふうになりてェなァ」
ー海兵から簡単に逃げられるように。
キッドは大楠を見上げた。
その様子を見て、ミーウはクスクスと笑った。
「キッドは泥棒じゃなくて、海賊王になるんでしょ? 海兵から逃げるくらいで満足してたらダメよ」
ミーウに指摘された赤髪の男は髪の毛の色と同じくらいに顔を真っ赤にして拗ねてしまった。
「お、おれは海賊王になるけど……べ、別にいいだろ!? まずは、海兵から逃げれるようにならねェといけねェんだからよ! 何が悪りィんだよ!」
そう言うと、キッドは3人に背を向けて座ってしまった。
「もう、未来の海賊王がそんなことで拗ねないの!」
「うるせェ!」
そんな2人のやり取りをアユナとキラーは微笑ましい様子で見ていた。