第7章 前夫
こんな会話をしていると離婚したことすら忘れてしまうから不思議なものだと思ってしまう。
「今度さ、真帆、また一緒に山梨の温泉に行かない?」
私たちは良く離婚してからも二人で仲良く温泉旅行にいっていたのだ。
山梨にある秘湯の一軒宿には何度も行っていた。
また、そこの温泉に一緒に行かないか。
そう、翔は言ってきたのだった。
「マルも一緒に行けるのかしら?」
「もちろん、マルも一緒に行けるよ。真帆いく?」
「うん、マルも一緒なら行くわ…」
その山梨の温泉宿は犬連れでも一緒に行ける温泉宿だった。
「じゃ、いつ行こうか?」
「私は、いつでも構わないわ…」
「そう?」
「うん、翔ちゃんの仕事の都合でいいから…」
翔は当時、某大手ゲーム会社にシステムエンジニアとして働いていた。
多分、会社名を言えば一発で分かる程の知名度のあるゲーム会社だった。
「日にちは任せるわ…」
「なら、行ける日が決まったらまたLINEするよ…」
「うん、分かったわ…」
私は、タカシとも関係を持ち、直樹とも関係を持っていたのにも関わらず、こうして、また翔と一緒に温泉旅行に行くことになったのだ。
私には、全くと言って良い程罪悪感はなかったのだ。