第5章 土曜日
私は、今日タカシは来ないのだろうか。
そう、思いながらも彼の携帯に電話を入れてみた。
呼び出し音が鳴っている。
しかし、携帯にはタカシは出なかった。
タカシは基本的に男だと言うのに、機械音痴だった。
携帯のLINEにも疎かったのだ。
私は、タカシの携帯にLINEを何度か入れたが、返事は来なかった。
タカシの賭け麻雀は店が閉店する時間まで続いたのだ。
そんな、事とは知らず、私はタカシが来るのを待っていた。
時刻はすでに夜の11時を過ぎていた。
今日は来ないのだろう。
そう、思い始めていた。
土曜日に必ず来ると言っていたではないか。
どうして、来てくれないのだろう。
そんな、思いが心を占めていた。
私は、ちょっと悲しくなっていた。
今夜は来ないのだと思うと、私はお風呂に入り、髪を乾かし、パジャマに着替えて薬を飲むとベッドへと潜り込んだ。
ベッドに入ってからも、何故だか気持ちは悶々としていてなかなか眠れなかった。
ようやく、気持ちも落ち着いて、眠りの森に迷い込もうとした時だった。
我が家の玄関のチャイムがけたたましく鳴ったのだ。
それは、1回だけではなかった。
何回もチャイムを押す音がした。
私は、こんな夜更けに誰だろうと思い、ベッドから這い出て玄関の灯りを付けた。