第2章 初回Therapy
「ひぇっ……」
(やだっ、変な声出ちゃった!)
「貴女、林さんオナニーは?」
私はブンブンとクビを振った。
「そ、それって普通は男の人がやるコト……ですよね?」
「ふふふ、そう思ってる人達、男女問わず結構いるけど、実際多くの女性が日常的にやってるのよ。」
(………っ、そうなんだ!)
「こちらへどうぞ?」
Ranさんは「Therapy Room」と書かれた可愛らしい札の付いたドアを開けた。
その中はぴったりとブラインドが閉まっていて、仄暗く、揺らめくキャンドルが濃密な香りを漂わせていた。微かに艶かしい音楽も聴こえる。
「ここが施術室(セラピールーム)、今は暗くしているけどお客様のお好みで明るくもするのよ。」
Ranさんは細い華奢な指で壁のスイッチを捻った。爪は短めで透明のマニキュアを綺麗に塗っていた。
照明が少し明るくなると部屋の中の家具類が見えた。
入ってすぐのところに革張りの肘掛け付ソファが一脚。色はピンク!!
小さなサイドテーブル、クローゼット……
その先には天蓋付きの円形のベッド!シーツやピロゥはやっぱりピンクだ………
壁一面にもピンクのカーテンが掛けられている。
そして――――窓際に置かれた猫脚の長テーブルに置いてある禍々しいモノ達を見つけて私は思わず息を呑んだ。
「わかるわよね?これは施術に使うものよ。
実はこれらは今や珍しいモノではなくなって、ぜーんぶネットで普通に買えちゃうのよ?目立つ売り場に置いているデパートもあるくらい。」
(…………へ、へぇ……知らなかった。)
「どうぞ?好きなモノ、手にとってみて?」
(………まさに男のヒトのアレの形したのとかスゴいけど、コスメみたいに可愛いのもあるんだ。)
私は一番端にあった小さなハート型のモノに手を触れてみた。
『ぶるるるるるんっ…』
スィッチが入ってしまったらしくけたたましく振動するハート。
「きゃっ!」
ゴトッ…………
驚いた私はハートを床に落としてしまった。
「ごめんなさいっ!」
「大丈夫よ。」
Ranさんは微笑むと、いつの間にかゴム手袋をしていた手でハートを拾い上げ、長テーブルの下から取り出した消毒液とペーパーで丁寧に拭きながら言った。
「この、サロンではね………」