第2章 初回Therapy
繋ぎ合わせたショップカードの裏の住所を何とか読み取り、私はある駅から程近いマンションの前に来ていた。
(―――――予約もなしにいきおいで来ちゃったけどどうしよう。)
マンションにはそれっぽい看板などは掛かっていなかった。
小綺麗な女性やサラリーマン風の男性が数人出入りしている、ごく普通の都会のマンション。
ルームナンバーはカードに書いてある。エントランスのインターホンのテンキーを押す。
しばらくコール音が鳴った後、女性の声の応答があった。
「はい、お待たせしました。」
「………あ、あのう……私、ユウさんのお店でカードをもらって………」
「ご来店ありがとうございます。ではロックを開けますね。エントランス入られたら正面のエレベーターでお部屋までお越しくださいね。」
――――ウィーン……
自動ドアが開いた。
私は言われたとおりエレベーターに乗って部屋へ向かった。
エレベーターも廊下も新しく清潔だ。
(ホントにここでいいのかナ?)
お部屋のドアにも看板や表札はない。普通のお宅だ。
ドアの脇の呼び出しボタンを押す。
「いらっしゃいませ。」
すぐに店主らしき女性が出て来た。
腰まである黒髪のロングヘアーに紫色の長いドレス。どこか占い師の様な雰囲気だ。
「どうぞ。」
勧められたソファにポスリと座った。
シンプルで品の良いインテリア。柑橘系のルームフレグランス。想像した様な「怪しさ」は微塵も感じない。
女性は湯気の立ったいい香りのハーブティーを私の前にコトリと置いた。
「改めてまして、オーナーのRanです。」
「あっ、私っ林ですっ……」
Ranさんは綺麗な微笑みを浮かべながら私の向かいに座った。
「本当は土曜日は予約がなければもう閉店の時間なのだけど……」
「あっ、すいませんっ!私予約もしないでっ!」
「いえいえ、ユウさんのご紹介の方ですもの。」
『ユウさん』の名前が出てガチガチだった私の緊張は少し和らいだ。
「あのっ、私よく分からないで来てしまったんですけどっ………ど、どんなことするところなんですかっ!?」
(……っ、いきなり変な質問しちゃった。)
「カードに書いてあるとおり、オナ二ーよ。」