【ブルーロック】HEALER【ミヒャエル・カイザー】
第1章 女嫌いのkisが財布を拾ってくれた日本人に好意を抱く話1
―――一ヶ月後。
〝ミヒャエル・カイザー お忍び緊急来日か!?〟
日本のネットニュースは朝から騒がしい。さっき東京タワーと一緒にこっそり撮った自撮りをInstagramで更新すれば、瞬く間に日本中に広がった。
〝「私、ここのお台場のカフェで働いているんですよ。だから今度遊びに来て下さいね。サービスしときます」〟
すでに東京タワーから離れ場所はお台場。アイツの言っていた働いているというカフェの目で立ち止まる。調べたところ海外にも店舗があり、なじみのある洋風で外にはテラス席があり、店内は所々人で埋まっている。店内へ入ると、「いらっしゃいませ」と聞き覚えのある声がスッと耳を通った。サングラス越しから顔を見る。間違いない。傷もない白い肌、小柄な身体は間違いなくあの時の女だ。
「ご注文はお決まりですか?」
あの時のような、にこやかな笑顔が向けられる。まだ俺には気付いてはいない様子だった。
「あの時、俺にくれたものと同じものを」
「ん? えっと......、」
気づいていない様子で俺の様子を気まずそうに伺う。俺はサングラスとマスクを少しずらすと愕然とした表情に変わっていく。
「お前の仕事が終わるまでここにいる。終わったら俺を呼べ」
そう助言して一万円札をトレーに置き、おつりはいらないと捨て台詞を残し、相手の返答も待たず店外のテラス席へと向かい座った。
昼を少し過ぎた頃、室内からの罵声が聞こえ視線を向ける。店内では客と店員が揉み合っていた。罵倒を上げたであろう少し腹の出た中年の男にペコペコと頭を下げるのはひとりの店員と、もうひとりはその店員の青年を庇うように頭を下げるあの女だった。会話が気になって、俺は店内へ足を運んだ。