【ブルーロック】HEALER【ミヒャエル・カイザー】
第1章 女嫌いのkisが財布を拾ってくれた日本人に好意を抱く話1
しばらく考え込んでから、手書きの付箋を見てから俺はコーヒーを口にした。コーヒーもサンドウィッチも、まぁ不味くはなかった。飲み終わったカップと包装されたビニールは捨てて、何となく紙袋と使用済みになったチケットは手元に握ってエコノミークラスの客よりも早めに搭乗する。
フライト中、背もたれを倒して横になった。音楽を聴くわけでもなく、寝るわけでもなく、スマホを見るわけでもなく、機内食も食べずに、ただ自分でもなぜかその使用済みになったチケットから目が離せなかった。
(なにやってんだ俺は、)
捨てろよ、こんな紙切れのごみ。なぜ捨てないんだ。なんで俺のチケットも使ったんだ。なんで俺に言わなかった。なんで、なんで―――。
答えのない困惑だった。今まで味わったことのない感覚に理解の乏しい思考がぐるぐるとループする。不思議な感覚だった。胸糞悪いわけでもない、嫌なわけじゃない。借りを返されて負けた気分、なのも違う。―――そうか、俺は嬉しいのか。
その結論にたどり着いた時、俺は体を起こしフックに掛けてあった紙袋に目をやった。何も言わず、そばにいてくれる。生きてる実感をくれる。あの時とは違う、もうひとつのもの。
見つけたぞ―――俺は、ずっとこれが欲しかったんだ。