【ブルーロック】HEALER【ミヒャエル・カイザー】
第1章 女嫌いのkisが財布を拾ってくれた日本人に好意を抱く話1
「いやいや、いいよ! いらないいらない!」
「いいから受け取れよ、お前が拾ったもんだ」
道端で金を押し付け合う様子をすれ違う通行人が振り返る。女はしばらく観念したのか、渋々と紙幣を受け取った。
「じゃあな、」
「...あ、待って、待って!」
「今度はなんだよ......」
「これ、チケットだよね...? 必要なものでしょ」
再び呼び止められ目の前に差し出されたのは、紙幣の中に埋もれていた青い紙切れ。身内も知人も誰もいない俺には関係ない、渡す相手もいない、この後の試合の関係者用の招待チケット。
「いらない、渡す人間がいないからな。いらないなら捨てろ」
「..ミヒャエル・カイザー?................この、チケット......もしかして......」
チケットに刻まれた俺の名前を口ずさむ。次に女がポケットからまさぐり出したのは同じ青い紙切れだった。あれは、俺が持っているのと同じ、関係者用の招待チケットだ。女が同じものか手元で重ね見比べた時、刻まれた関係者の名前が見えた。
〝イサギ ヨイチ〟
「 ちゃん?」
遠くから胸糞悪い声がした。
「......あっ! 世一くん! 久しぶりだね!」
少し先の人混みから駆け寄って来たのは、ブルーロックで会ったあのクソ世一だった。身内なのか、それとも知人なのか、….....いや、.俺には一生関わりのないことだ。所詮他人だ。
「あ、カイザー!」
その場を後にしようとして、クソ世一が俺を呼び止める。そんなんで止まるわけないだろ。のうのうとそこでの温気におしゃべりでもしてろ。俺は、アイツらとは違う。余計なものはいらない。俺はサッカーが出来ればいい。あの女も、どうせアイツと同じだ―――。