第4章 【五条悟】嫌よ嫌よも。【R18】
―――髪を切られた。
願掛けなど、女子小学生のような女々しいことをしているつもりはなかった。
ただ、あの人は覚えてないかもしれないけどこんな関係になってしまう前に一度だけ髪を褒められたことがある。
いや、褒められたというのは語弊があるかもしれない。
交流会が始まる前、髪ゴムを無くした。
ずっと使ってたから、ゴムが簡単に切れてしまったのかもしれない。
そのことに気が付かなかった。
しょうがないので適当に輪ゴムか何かで結ぼうと思った時、五条先輩がたまたま制服のポケットから一本のゴムをくれた。
なんで持ってるんだろうって疑問が頭の中で浮かんだと同時に、先輩はぶっきらぼうにクチを開いた。
「みっともねぇな。せっかく長い髪なんだから、ちゃんとまとめておけよ」
たった一言。
なんてことない会話だ。
初対面だからか、先輩からそこまで冷たい態度をとられていなくて、ましてや肉体関係を強制されてもいなかった。
そのあと無理矢理抱かれたけど。
だけど、粗雑に青い色のそれを落とされ、重くもないのに、手のひらがじわりと熱くなったことを覚えている。
彼がゴムを持っていたのは、同級生の夏油先輩と硝子先輩に髪の毛を遊びで結ばれたことがあったらしく、それをそのままポケットに突っ込んでいたからとぼやいていたのを聞いた。