第26章 【呪術廻戦】DOOR【3】
例えば。
1990年代、ファクシミリというものが普及された。
そこで人々は初めて、文字を電波に変えて送信することができた。
2010年。
人々は音声を電波に変えて送信することを可能にした。
しかしそこまでだった。
結局のところ、電波を使って送信できるものは平面上のものや音だけであり、物体は空間を転移することはできなかった。
つまり、ここで「送信」という分野は壁にぶつかったのだ。
それが今の科学の現状。
「送信」という分野が更なる進歩を遂げるためには、壁を越える新しい鍵が必要だなのだと、五条はそう言った。
「進化は常に偶然に起こりえる訳ではなく、何かきっかけが必要なんです」
それが新しい鍵。
目の前に立ちふさがる「限界」と言う名の扉を開けるための鍵。
硝子は五条の話しを聞きながら問うた。
「じゃあ、送信の分野だけでなく全ての分野において科学は壁にぶつかったのか」
その言葉に、五条は口元を緩め静かに首を横に振った。
確かに科学の進歩という目標を持った科学者たちは、たくさんの壁にぶつかり、その姿を潜めてきた。
だけどかろうじて微細ながら、ベクトルを持つ分野が残っていた。