第21章 【呪術廻戦】DOOR【1】
ありふれたものを拾い集めて、流れゆく者に背を向けて、彼女は彼女の道を歩く。
釘崎の脳裏に。
あの日の言葉が浮かんだ。
小学生の時。
硝子が何度も聞いてきた。
あの言葉。
【夢はなんですか。野薔薇ちゃん、夢は、なんですか】
あの時は答えることができなかった。
夢などないと叫んだ。
それは本心だったし嘘だった。
だけど今なら胸を張って答えることができる。
今なら嘘偽りなく、今の自分の夢を。
「釘崎野薔薇!!私の将来の夢は、"幸せになること"!!幸せになるために、素敵な事をたくさんします!!楽しい事も辛い事も嬉しい事も苦しい事も。みんなみんな幸せな事。私は大きくなったら幸せになりたい!!」
それだけははっきり言えた。
急にそんなことを言い出す釘崎に3人は目を丸くするも優しく微笑んだ。
広がる遮断の中で、彼女たちは未だここに立って開かぬ扉を見つめている。
彼女は彼女の道を歩み、そして自分自身に語り掛ける。
【もう少し進んでみない。目の前のドアを開けて】
それは踏みだすための一歩。
砂嵐となったチャンネル。
かちりと音が鳴ると、釘崎の目の前には扉が表れた。
「CROSSING」と書かれたその扉に彼女は手を伸ばし、ドアノブに手を掛け、ゆっくりと回した。
瞬間。
ぱちんと指を鳴らす音が聞こえた。
ドアノブに手を掛けていた釘崎の腕が、重力に逆らわずにだらりと下へと落ちる。
いつの間にかそこはあの真っ白な大広間へと変わっていた。
4人の顔が釘崎を見つめている。
彼女は彼等をゆっくりと見渡した後、自分が座っていた椅子へと腰を下ろした。