第21章 【呪術廻戦】DOOR【1】
「私さ、いつの間にか私たちの間に壁ができちゃったんじゃないかって思うのよね」
「壁?」
残り少ないハイボールを釘崎は一気に降下した。
コン、と音を立ててテーブルに置く。
釘崎の言う「壁」という言葉に西宮は聞き返す。
真依もまた、水滴の付いているグラスを指でなぞりながら口を開いた。
「そんなの仕方ないじゃない。私たちはあの頃とは違うんだから」
「でも、私たちの間に壁ができたって、私たちの間が広がったって、それは私たちの間が閉まったというわけではないでしょ」
と、三輪が言った。
それぞれのグラスにはもうお酒はない。
だけど、誰も追加で注文する人はいなかった。
ただ空になったグラスを見つめたまま、彼女たちは話し続ける。
彼女たちの間は広がってはいるが、遮断をされたわけではない。
遮断されたわけではないのなら、またこうしていつでも戻って来れる。
人間関係というのは、簡単に切れるようで切れない。
絶交しようが絶縁しようが、会わない時間がどんなに長くたって。会いたいと思いさえすれば、その壁はきっと簡単に乗り越えることができる。
「会いたい」という気持ちがあるのなら。
その気持ちから背を向けていなにのであれば。
その気持ちを諦めていないのであれば。
広がる遮断を止められなくても。
彼女たちが広がる遮断の中にいたとしても。
背の高い壁に阻まれて向こうの世界が見ることができなくても。
彼女たち自身に、自分たちに乗り越える力があったら。