第14章 【五条&七海】死んだ方がマシだった【R18】
が事務所を出たのは夜がまだすっかり明けきらない未明。
五条が運転する車の助手席に座り居心地が悪そうに身を竦めていたら、そんな彼女を横目で見ていた五条が口を開いた。
「今すぐどうこうするつもりはないよ。会社に勤めてるし、家だって契約してるでしょ。ということで、明日にでも辞表出して家を解約してね」
「……は、い」
「こっちにも準備があるからね、しばらくは事務所に住んでもらう形になるかなぁ。僕の部下たちの相手を何度かして慣れてもらわないとね」
その言葉にゾッと寒気が走った。
先程の、あの行為を不特定多数とさせられる。
体に刻まれた残酷な記憶が吐き気と共に蘇り、は顔面を蒼白にし誤魔化すように自信の上腕をギリッ……と握った。
好きでもない男性に抱かれる恐怖。
だけどこれが自分の選んだ道。
は大きく息を吸って恐怖や緊張でうるさくなった心臓をなんとか落ち着かせた。
自宅に着いたのは明け方だった。
人通りは全くなく、ポツポツと灯った街灯がうっすらと明るくなり始めた町を照らしている。
「あ、の……五条さん、ここです……」
「へぇ?一人暮らしにしてはいい所に住んでんじゃない?」
「……普通の家です」
「じゃあ、また明日連絡してね。……もし、変な気でも起こしたらどうなるか……分かってるよね?」
口調は優しいが、サングラスの奥で光る瞳はどこまでも冷徹で笑ってなどいなかった。
は小さく頷いて、渡された名刺を握り締した。
そこには五条の連絡先が書かれていた。