第13章 【ヒロアカ】Who killed Cock Robin【0】
「もしかしたら上鳴のやつヴィランに襲われて……」
「いや、それはありえねえ」
切島の言葉を遮ったのは轟だった。
「考えてもみろ。俺達がここに来るまで窓を割ろうと試みた。だが、音を聞きつけてやってきたのは相澤先生だけだ。今だって上鳴を探そうと叫んでいたにも関わらず、誰もお前を襲おうとはしていない。緑谷だって切島を呼ぶために"A組にいるよ"と言ったが、切島意外にここに来ようとする気配も何も感じない。おかしいと思わないか?」
「確かに、俺がヴィランだったらまず初めに切島を探すと思う。もしそれができなくても人が集まっているこの場所を襲撃しないのはおかしい。俺達は今、"個性"が使えないんだから、殺そうと思えばすぐにでも殺せるはずだ」
轟の声に賛同するように心操の声も重なった。
では一体、上鳴はどこで行ってしまったと言うのか。
シン、と静まり返る教室。
友人が、生徒が、一人いなくなった。
肉体を貫いて電光のように駆ける不安な戦慄に似た息苦しさに胸の奥が重く黒く淀んでいく。
「とりあえず、俺は上鳴を探しに行く。お前らはここで待ってろ」
「ぼ、僕も探しに行きます!!」
「俺も!!じっとして待つなんて俺らしくねえっス!!」
「まぁ、ヒーローを目指しているんですから黙って待つなんてことはできないですよね」
目を細めて笑うホークスに頷くように彼らはまっすぐな瞳で相澤を見つめた。
そうだ、こいつらは子供とはいえヒーロー志望の有精卵だ。
友人がいなくなったと知って大人しくするような連中じゃない。
小さく笑みを零した相澤は「俺とホークスさんの二手に分かれる」と言い上鳴を探す組と食糧を探す組へと編成を作り上げた。
相澤組には切島と心操となり、上鳴を探すこととなった。
ホークス組には緑谷と爆豪と轟の3人となり、食料を探すこととなった。
「30分後、この教室に集まるように。以上だ」
相澤の声に、全員首を縦に振った。