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【雑多】be there【短編集】

第17章 【石神千空】Trick or treat.







「なにこれ」
「菓子だろ」
「パンじゃん」
「"菓子"パンでもあんだろ」
「うわ、千空の口からオヤジギャグ聞きたくなかった」

眉間に皺を寄せるに俺はケラケラと笑う。
は何かぶつぶつと文句を言っているが、俺が上げたパンを一口食い始める。
文句言いながらも食うのかよ、と思ったが、うまそうに頬張る彼女の横顔を見てどうでもよくなった。
そして俺の中に潜んでいた一つの感情が姿を現す。

「」
「んー、今度はなに?」

早くお菓子パーティーの場所へ行きたいのだろう。
足早に向かう彼女をもう一度呼び止めた。
不思議そうな顔をするを見て俺はにやりと顔を歪ませる。

「Trick or treat」
「へ?」
「Trick or treatだよ。なんか菓子よこせ」
「え、いや、お菓子ならあっちに……」

狼狽えるが面白くて俺は「俺はあげたのにてめぇは俺にくれねえのか?」と追い打ちをかける。
が菓子を持っていても持っていなくてもどっちでも良かった。
ただ、彼女のこの姿を見たかっただけ。

「持ってないんだけど……」
「じゃあ悪戯するしかねえな」

喉奥で笑う俺に何かを察したのか「また過酷な作業だったらどうしよう」と焦りの色を見せる。
は恐る恐る顔をあげた。

「どんな悪戯をするつもり?」

俺は悪戯っ子みたいな笑みを浮かべ、引き寄せられるようにの唇に俺の唇を推しあてた。
ごくあっさりとした冗談みたいに軽いキス。
は目を大きく見開き、持っていたパンを地面に落とした。

「悪戯完了」





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