第9章 【狗巻棘】舞台、開幕
衝撃で目を覚ました。
すでに日は昇っている。
いつもより少し早い目覚め。
俺の全身は汗で濡れていた。
ありえない。
幼馴染で、大切で可愛い後輩の彼女にキスをするなんて。
は俺のことを弟みたいにしか思っていない。
それ以上のことなんて……。
恵だって俺のことを信用してる、はず。
そんな俺が、彼らの思いを裏切っているなんて知られてしまったら、どれほど傷つくだろう。
傷つけてしまうだろう。
俺の気持ちは、彼らに悟られてはいけない。
隠さなきゃいけない。
俺は俺の気持ちに嘘をついた。
そうすることで彼らを守っていたし、自分の心も守ることができた。