第2章 【加茂憲紀】もしも
帰り道、手を繋いで交戦へと向かう私と。
「そう言えば、なんではあんなに心中立てに詳しいんだ?」
彼女は繋いだ手を離し、スキップでもするように私の前に飛び出してくるりと回った。
ひらりとスカートが揺れる。
悪戯っ子の様な笑顔から覗く白い歯が眩しい。
「そんなの自分で考えて」
両手を広げて走り出す。
転ぶぞーなんて声をかけて、楽しそうに笑う彼女の姿を私は眺めて笑う。
そんな日常がこれからも続けばいいと思った。
そんな日常がこの先の未来にも続いていてほしいと願った。
それは、誰もが一度は考える「もしも」の話。
もし、この目が見えなくなってしまったら。
もし、この耳が聞こえなくなってしまったら。
もし、明日死んでしまうとしたら。
呪術師に悔いのない死などはない。
いつ死んでもおかしくない場所で生きている。
必ずしも年老いて寿命を迎えて死ねるとは言えない未来。
だったら、どこまででもついてってあげる。
なにがなんでも絶対に離さない。
離してあげない。
約束、だよ。