第7章 出会い
彼女の身体を氷から引き抜くも、依然目は覚めない。
身体はとても冷たく、顔色も青白い。
まるで人形のようだ。
先生との会話を思い出した。
"は自死するしか死ねないんだ。"
遅かった。
後少し早ければ、救えたかもしれない。
もっと早くにに逢いに行っていれば、達は死なずに済んだかもしれない。
腕の中にいるの頬をそっと撫でる。
ふと、先ほどの太宰の言葉で思い出したのだ。
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『ねぇ、中也。白雪姫のお話知ってる?』
「白雪姫ぇ?毒林檎のやつか?」
『そう!毒林檎を食べて眠っちゃうの、目を覚ます方法は王子様のキスなの!』
「そんなんで目覚めるのか。」
『もし私が毒林檎を食べて、眠っちゃったら起こしてね!』
「なっ!手前はそんなもん食っても死なねーだろ!」
莫迦げてるかもしんねぇ、そんなの自分でも判ってる。
然し身体が自然と動いた。
腕の中で眠っているにそっと口付ける。
やはり目覚めない。
そりゃそうだ、あんなのおとぎ話に過ぎないのだから。
最後に彼女を抱きしめ、別れようとした瞬間。
彼女の身体がピクリと反応した。
「おい!っ!」
ゆっくりと目が開く。
「!!よかった、無事か?」
何も云わず、ぼーっと俺を見つめる。
様子がおかしい、まさか、、、、。
俺は言葉を続けた、確信を得るために。
「俺だ、中原中也だ。判るか?」
彼女は俺の顔をじっと見た。
頼む。覚えていてくれ、、、、。
しかし現実はそうはいかなかった。
彼女は首を横に振った。
聞くと何も覚えてないとのこと。
自身の名前、両親のこと、勿論俺のことも。
ショックだった。
だが、それよりもは生きている。
それだけで十分だった、また1からやり直せばいいのだから。
俺は小さいの手を取る。
「俺は中原中也だ!よろしくな、!」
彼女は目をパチクリさせながらも俺の手を掴んだ。
これが本当のとの出会いの話だ。