第4章 寝顔【不死川実弥/*】
───風柱、不死川邸。
夜も更ける中、目が覚めた円華は頭上に置かれた西洋のランプを頼りに、隣に眠る実弥の寝顔を堪能していた。
横寝で自分の腕を枕代わりにし、もう片方は円華の腰をしっかり抱いたまま静かに寝息を立てている実弥。
普段は分けられた前髪も今はしんなりと下りていて、それを指先でソッと掬うと、少年のようにあどけない寝顔をしている彼に思わず頬が緩む。
(まつ毛長い…かわいー…)
間近で寝ている彼を見る機会は多くは無い。楽しくなってきた円華は穴が空くんじゃないかという程に実弥に見入った。
顔の横から走らせたような大きな傷。
隊服となんら変わらない程、胸元が大きくはだけた夜着。
そこから見える固く締まった筋肉といくつもの大きな傷跡。
(…この人、すぐ自分切っちゃうから気が気じゃないけど)
一番大きな傷跡をそっと指先でなぞった。
「…んだよ、眠れねェのかァ?」
「─っ!」
観察の間も無く眠気の残った低い声に視線を戻すと、実弥が欠伸を噛み殺していた。
「あはは…ごめんなさい。…起こしちゃった?」
「あんな熱烈な視線感じりゃァな」
腰に回る腕に込められた心地いい力で抱き寄せられ、珍しく甘えるように円華の胸元に顔先を埋めてきた実弥。
そんな彼の髪に指を通すように撫でると、熱の篭った吐息が胸元にかかる。
「─んっ、実弥くんの寝顔が可愛いいなー、と思って…」
「…どこをどう見りゃァそう思うのか、頭ん中覗きてェもんだなァ」
暖かい唇の感触が胸元から鎖骨、首元へと徐々に上がってくる。
円華の腰に回る腕が帯を解いたのか、微かに感じる開放感。
その腕はゆっくりと下へと降りていき、はだけた布の隙間から入り込んできた。
厚い手が太腿を滑るように這うと、まるで身体が期待してましたとばかりに腰が小さく捩れ、自然と内腿に力が入る。
「…んっ、…するの?」
「…誘ったのはお前ェだろォが」
捩じ込むように割って入る実弥の膝がそれを許さず、円華は力に敵うはずもなく簡単に押し倒されてしまった。
「…いい眺めだなァ、円華」
夜着を唯一縛る帯が解かれてしまえば、纏っていた布は簡単にはだけてしまう。
ひんやりとした外気が円華の肌を撫で、その上では実弥がほくそ笑んだ。