第3章 治療【宇髄天元】
やっちまった。
あからさまに眉を八の字にして落ち込んだかと思えば、出禁が取り下げられたと分かると、頬を染めて笑顔を見せる円華が愛おしくなり、つい唇を寄せてしまった。
二人きりの時でさえ、口吸いひとつで顔を真っ赤に染めると言うのに、残念な事に今この場には部外者が二人もいる。
「…あー…と、…派手な告白された上に、あんまり可愛い顔で安心しきってたからつい…すまん…」
呆然と立ち竦む円華を直視できず、視線を逸らしてしまった。
だが、円華の怒りはごもっともな訳で…
「~っ、…うっ、宇髄さんのすけべ!やっぱり出禁にする!」
「…は!? いや、流石に悪かったって!」
容赦ない言葉に視線を戻すと、涙目で顔を真っ赤にした円華がわなわなと震えていた。
「宇髄さんなんてもー知らない!」
そう言葉を吐き捨てた円華は勢いよく部屋から飛び出していってしまった。
空を捕まえる腕だけがそこにあった。
「え、まさか俺出禁決定?」
「…阿呆だな、お前。…円華に同情するぜェ」
「自業自得ですねぇ」
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─────暫くして、蝶屋敷で女隊士に頭を下げ歩く柱が居る、と鬼殺隊の間で噂が広まったのだった。
Fin
2024.7.16