第1章 血鬼術【宇髄天元/*】
───森の奥にある屋敷内。
鬼が巣食っているという屋敷に討伐任務で来ていた私は、屋敷内の部屋の中で盛大な溜息をついた。
「はぁー…鬼は切ったよ。確かに頸切った。え、…私、ちゃんと斬ったよね?」
こんな馬鹿げた独り言が出るのも仕方ない。
鎖で四肢を四方に縛り上げられ、動けずにいるんだもの。
数分前、斬った鬼が最後の力で血鬼術をかけ、物の見事に鎖で宙吊り状態だ。弱いからって油断した私のミス。
なんで消えないのか分からないが、恐らく陽に当たれば消える、と思いたい。
──が、これをあの人に見られでもしたら…。
「…っ!マズいよ!終わっ「おい、円華!まだ終わってねぇ、のか…って、何してんだ、お前」
(あー…、終わった)
扉を勢いよく開けた声の主は、音柱こと宇髄天元様。
私の師匠で恋人様。そして今はすんごい馬鹿にした顔でこっちを見てる。
「…宇随さーん、これ切って?」
試しに甘えた声でオネダリしてみたが…
「馬鹿か、お前は。油断すっからんな事になんだよ」
「ごもっともすぎて何も言い返せません!ごめんなさい!」
「派手に開き直んじゃねぇ!…ったく、中々屋敷から出てこねぇから来てみりゃ、なんだこのザマは」
「あははー…面目無いです…」
呆れたように溜息をつく宇髄さんだけど、こうやって心配して来てくれた彼は優しくて、強くて世話焼きで、私の自慢の師匠であり、恋人様なのだ。
いつもは見上げる程の背丈差があるのに、縛り上げられているせいで宇髄さんと同じ目線の高さがなんだかくすぐったく感じる。
そんな事を考えながら、宇随さんが鎖を切ってくれるのを待っていると、大きな手がゆっくりと私の太腿を撫でるように触れてきた。
「う、宇髄さん…?お、おお音柱様!?何をお考えで!?」
「…油断した円華にはド派手に仕置きしなきゃなんねぇな、って」
反対の腕を私の腰に回し、首筋に甘く噛み付いてきた。
熱の篭った声で悪びれることのない囁きと熱い吐息が首筋をくすぐり、体が小さく跳ねる。それと同時に首元でチクリと痛みが走った。
「…んっ」
徐々にその手は隊服の裾の中へと入り込み、鼠径部を指でなぞり始めた。
"仕置き"を理解した私は宇随さんに恐る恐る視線を向けると、彼は口角を小さく上げ、愉しそうに笑みを浮かべていた。
(…あ、終わった)