第1章 血鬼術【宇髄天元/*】
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「…ん、…あ、れ…私いつ寝たっけ…」
重い瞼を薄ら開けど、まだぼんやりとする頭に何も考えられなくなる。少し身動ぐと、大きな腕が後ろから私の体を包んでいた。
香りと逞しい腕で誰のものかだなんて見なくても分かる。
(…あったかい、安心する)
彼の腕の中でまだ眠っていたい。そんな思いで再度目を閉じた。
(お布団ふかふかー…あれ、私…いつ屋敷に帰ってきたんだっけ…)
確か、宇髄さんと任務が一緒になって、それから鬼斬って…、鎖が手足に絡みついて…
「!!?」
段々と鮮明になってくる記憶に閉じた目がバチッと見開く。
勢いよく起き上がると腰と股に鈍い痛みを感じ、気怠い体が起きた出来事を物語っていた。
だが、私が覚えているのは鬼が巣食っていた屋敷での事だったはず。
今は綺麗な夜着にふかふかのお布団。見覚えがあると思いきや、ここは藤の家だった。
「…円華、起きたのか?」
ひとりぐるぐると状況を整理していると、隣で眠る声の主へと視線を移す。
額当ても無く、結んだ髪も下ろし夜着の姿をした宇髄さんが肘枕で横になっていて、はだけた合わせの隙間からは逞しい胸板。隊服姿の時とは全く違うその色気ときたら最早詐欺紛いだと私は思う。
「…宇髄さん、私、最後記憶無いんだけど…」
「あー…お前、気ぃやり過ぎて意識飛ばしたんだよ。円華の隊服も汚しちまったから近くの藤の家で休むことにしたっつーわけ」
まだ眠り足りないのか大きな欠伸をしながら説明する宇髄さん。
その彼の腕に抱き寄せられ、また布団に逆戻りした私は大体の経緯を把握したはいいものの、気怠さからか暖かい腕の中で重い瞼が降りてくる。
過ぎてしまったものは仕方がない。
「…宇髄さん…、1ヶ月、…するの禁止ね」
「………はぁ!?ちょっ、おい円華!待て!わ、悪かったから!考え直せ!な!?」
慌て、狼狽える姿が可愛くて、そんな宇髄さんが見られるのも私の特権。そんな事を考えながら、再び眠りについた。
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一ヶ月後。私は再び滅茶苦茶にされ、二日間もの間、寝室から出してもらえなかった。
2024.6.23
Fin.