第4章 つよがり いいわけ あやうい子
リモートワークを始めて1週間。食料はなんとかなるし仕事もなんとかなる。長期休みもなかなかないため自宅の大掃除も捗っている。
次に夜久が来た時に追加の家具でも見に行こう。そう思えるくらいには気は楽である。
しかし、眠いし体がだるい
今までのルーティンが崩れているからかもしれない。
お腹の調子まで悪くなって来た。
いたた、とお腹を抱えてトイレに向かえば、大惨事。急いで汚してしまった下着を脱ぎサニタリー用に履き替える。
カレンダーを確認すれば、本来であればまだ来るはずがないのは間違いない。大きくずれたことのない生理周期が乱れている。
やはりこの環境はストレスなんだろうなと苦笑したところで我にかえる。ストックがない。
前回の生理の際、仕事が忙しくてネットで注文するのを忘れていた。今から注文しても届くまでにはストックは尽きる。だからといって黒尾や孤爪くんに生理用品は買わせられない。
すぐそこのドラッグストアに行くだけだから大丈夫だよね。
そんな甘い考えをしながら少しだけ痛み出した下腹部を気にしながら着替えをすると、財布とスマホを持って家から出た。
正面から出るのは怖いなと思い裏から出る。念のための帽子とマスクで怪しさは倍増だけど、本当にこれがいるのかと思うくらい人はいない。
自意識過剰だったのかも、いないじゃない。
そう思いながら、ドラッグストアに入ると必要なものを籠に入れ手早く会計を終わらせる。
びくびくしすぎだし、黒尾達も過剰になりすぎ。
大丈夫そうだから明日から普通に出勤にしようかな。
そんなことを考えながら裏口に向かえば肩口をトントンと叩く手。
振り返れば向けられたマイクとカメラ。
「今夜久選手と熱愛が報じられているAさんですよね。夜久選手とどのような関係なのでしょうか!」
向けられたマイクにたじろぐ。逃げようとすれば、1人、また1人と記者が増えるマイクやスマホが向けられる非日常に頭が真っ白になってしまう。
強い語気や迫るマイクに感じる恐怖。
貧血と恐怖が混じり冷や汗が背中を伝う。
たすけて
声を出すこともできずに口を閉じていれば背後から声が聞こえた。