第2章 つよがり いいわけ いとしい子
「ごめんな。」
夜久から紡がれた謝罪で堰を切ったように涙が溢れていく。
泣きたいわけじゃなくて首を横に振る。
私の掌を握る夜久の掌は世界が求める手。
コートを守る大事な手。
そんな手が私を落ち着かせるために手を握り、溢れる涙を掬う。
「今、何て思ってる。」
今夜久といられることが嬉しい
でも、寂しい
一緒にいたい
帰らないで
そんな言葉が頭の中を渦巻くが、昔から言われ続けた"お前は強いから"の言葉が本音に蓋をする。
「大丈夫、だから…」
必死に絞り出した声は触れてきた柔らかな唇で止められる。
柔く暖かな唇が私の言葉を止め、ちゅ、と吸い付く。
「それ本音じゃねえの知ってる。俺だって帰りたくねえしずっとここにいたい。今日まで一緒に過ごしてこっちに置いて行きたくないって思った。」
溢れた涙を夜久の唇が掬う。
潤んだ瞳で夜久の表情がわからない。
「聞かせて。受け止めさせて。」
そんな貴方に口を開くと、私は夜久に抱いてと願った。