【WIND BREAKER】愛なんて知らなかった(R18)
第1章 引っ越し
「もし良かったらだけど、月曜日の夕方から夜の間にお店に来ない?会わせたい奴らがいるのよ。嫌じゃなければ。」
『会わせたい…奴ら…?』
奴らって事は大人数だ。
いきなり初対面の大人数と関わるのはハードルが高すぎる。
『ごめんね…月曜日はちょっと学校が長引くと思うんだ。また今度お願いします。』
断ってしまった。
嫌な顔をされるのでは…
「そうよね。ただでさえここから星女はかなり遠いもんね。うん、また今度。
あ、そうだ。連絡先教えて?」
『あっ…うん。』
この町に来て初めての連絡先の交換。
緊張するけれど嬉しい…
「あら、可愛い。猫飼ってるんだ。」
私のアイコンを見て、ことはちゃんが笑った。
『2年前に死んじゃったんだけど…大事な家族なんだ。』
「…そうだったの。辛かったね…」
『……うん。あ、メッセージありがとう。
ふふっ、ことはちゃんのアイコンはオムライスなんだね。』
「そうなの。あ、よかったら今度、沙良ちゃんの地元の…さっき言ってた美味しいオムライスのお店?
連れてってよ。バイトが休みの日とか、他のお店の味勉強したくて。」
『え………』
私…あの町は…もう……
「…沙良ちゃん?」
『あ、うん…また今度。ぜひ…』
「………」
お店を出た頃には夕方になっていた。
随分長居してしまった。
けれど楽しかった。
友達…と呼んでいいのかな。
少し…ほんの少しだけれど、前向きになれたような気がした。