【WIND BREAKER】愛なんて知らなかった(R18)
第5章 高架の向こう側
本当にただの憶測だけれど、蓬莱さんのやりたい事が少し…わかった気がした。
「…いずれにしても、もう快人は沙良ちゃんに近づかないはずだから、安心してね。」
自転車をひきながら、笑顔でそう口にした。
『ありがとう…ございます。』
何となく、本当にもう蓬莱さんは来ないと思った。
『十亀さん…私に何か、お礼をさせてもらえませんか?』
「…お礼?」
『はい……先ほども助けていただきましたし、蓬莱さんの事も…間に入っていただいて本当に助かりました。
何かできる事があればですが…』
「んー…何だろう。例えばどんな事してくれるの…?」
『お金はそんなにないので…高価な物とかは無理ですが、何か食べ物とか飲み物くらいなら買えますし、勉強を教えるとかなら…もしかするとお役に立てるかもしれないです。あっ…不必要だったら…ごめんなさい。』
勉強を教える事は風鈴の人達の反応を見ても、少しだけ役に立てるのではと思った。
「そうだなぁ…」
十亀さんは立ち止まり、ニコっと笑った。
「それさぁ、エッチな勉強も教えてくれるの?」
『ぇ………?』
……えっち……エッチ………H………?
『…っ……』
あろう事か、梶君が自分の上で妖艶に動く姿を思い出してしまい、一瞬で火が噴きそうなくらい顔が熱くなった。
『エッチなっ……勉強って…何ですか……?
普通の…国語とかっ…数学とかっ……そういうので…』
「沙良ちゃんてさ…ホントに面白い反応するよね。」
わたわたとする私をじっと見つめ、十亀さんは顔を近づけた。
「そんな顔するならさぁ…襲っても文句言わないでよね?」
『…っ……襲っ…?!』
どんどんと顔が近づいてくる。
キス…されるっ……!?
ギュッと目を瞑ると……
「あははっ、冗談だよ。するわけないじゃん、沙良ちゃんみたいな、見るからに処女の子に…」
『っ…処女じゃ…』
カッとして言い返そうとし、口をつぐんだ。
「…へぇ。処女じゃないんだねぇ。」
ニヤリとする十亀さん。
『…っ……』
十亀さんは私の頭にポンポンと手を乗せた。
「からかってごめんね…
沙良ちゃんち、酒屋さんでしょ?ラムネって置いてる?」
『ラムネ……あります。』