【WIND BREAKER】愛なんて知らなかった(R18)
第4章 ※初めて
「沙良…」
俺は沙良と向き合い、目を逸らさずに言った。
「今日の事は…遊びじゃないっつーか…
考えてるから…整理できたらまたお前に…」
思っていることが上手く喋れなくてイライラする。
焦る俺の腕を掴み、沙良はまた歩き出した。
『はい…待ってます。』
「………」
どれだけわかってくれたかわからないが、今は沙良のその言葉に甘えよう、俺はそう思って腕に力を入れ、ゆっくりと歩き出した。
『ありがとうございました。
お休みなさい…』
店のシャッターの鍵を開けると、振り返って小さな声で言いながら頭を下げた。
「ああ…」
沙良を引き寄せてそっと抱き締める。
『…っ…梶君…』
沙良を抱きしめる腕の力を強めると、向こうから歩いてくる2人の影を感じ、息が詰まった。
『……?』
明らかに動揺する俺を見て、沙良が振り返った。
「梶…?……沙良?」
そこには、驚いたようにこちらを見て立ち止まる梅宮さんと、柊さんの姿があった。
ーーーーーーーーーーー
「悪いな…ことは。また戻ってきちゃって。」
「いいけど…」
心配そうにこちらを見つめることはさん。
無理もない。かれこれ無言の状態で5分以上が経っていた。
「梶…」
梅宮さんがコーヒーにミルクと砂糖を入れながら俺を呼んだ。
「はい…」
俺がポトスに呼ばれた理由は勿論わかっていた。
「水臭いじゃねぇか。沙良と付き合ってたなんて知らなかったよ。なぁ?柊。」
俺を見つめ、淡々と話す梅宮さんは何となく覇気がなかった。
それはここ最近、ずっとだ。
既視感と感じたのは、沙良の目の下にもあったクマだと、梅宮さんを見て改めて気付いた。
「あぁ……」
いつもは口角の上がっている柊さんが、含みのある返事をした。
「…付き合ってないです。」
俺も下を向き、やっと、そう口にした。
「……へぇ。見間違いじゃなきゃ、さっきお前らが抱き合っていたように見えたけど…?」
「………」
無表情の梅宮さんを囲む空気は、ビリビリと殺気立っている。