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【WIND BREAKER】愛なんて知らなかった(R18)

第3章 遭遇




ーーー数カ月後ーーー



side 沙良


「いやー。梅、今日もありがとな。」


腰を叩きながらお礼を言う父は、すっかり梅くんと親しくなり、梅なんて呼ぶようになっていた。

「いや、全然。いつでも言ってよ。肉体労働ならどんどん若いやつ使ってくれていいし。」

「ははっ、心強い。俺ももう若くないよなぁ…まだまだイケると思ってたんだけど、屈んだり持ち上げたりがしんどくなってきてなぁ…自分の歳を実感するよ。じゃ、配達行ってくる。沙良の事頼むな。」

梅君の肩に手を乗せ、ミニキャブに乗り込むと、父はエンジンをかけ、車を発進させた。

『もう…いつまでも子供扱い…』

「…ふっ、親にとったらいくつになっても子供なんて可愛いもんなんだろ。それに沙良は遠藤さんの大事な一人娘だし。」

ぐるぐると肩を回し、私を見る梅君。

「留守を任されたからには、ちゃんと守らなきゃな。」

ニカッと笑う梅君から急いで目を逸らした。


心臓がドクンと高鳴った。

梅君は初めて家まで送ってくれた時以降、何かと気にかけてくれた。
毎日のように風鈴のメンバーが誰かしらお店に出向いては、手が足りているか、手伝う事はないかと聞いてくれたのだ。
父は元々社交的なタイプだから、風鈴の皆とはすぐに打ち解け、現在に至る。

新しい町で良くしてもらっている事は本当にありがたいし、嬉しい事だと思う。

だから私にできる恩返しとして、時間のある時はメンバーの勉強をサポートしているのだ。
皆、私の拙い教え方でも途中で投げ出す事なく、一生懸命取り組んでくれている。


良くしてくれるのはありがたい事なのだけど…

「ん?沙良?どうかしたか?」

心配そうに顔を覗き込む梅君との距離は、わずか20センチ程になっていた。

『…っ……』

人懐こい大きな垂れ目。
真っ白な肌。筋肉質な体に、掻き上げられた髪から滴る汗がきらきらとしていて、直視できない大人っぽさがある。


最近の自分は一体どうしてしまったのだろうか…


梅君の一挙手一投足に目を奪われ、勝手に恥ずかしくなってしまうのだ。
この想いが何なのか、いくら鈍感な自分でもとっくに気づいてはいるけれど…

告白するなんて選択肢は勿論ないし、勝手に眺めては、只々恥ずかしくなる、それはこれからも変わらないだろうと思った。
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