【WIND BREAKER】愛なんて知らなかった(R18)
第8章 ※歪み
カタカタと震えながら俺を見つめる瞳に胸が痛み、開いたワンピースを閉じると、腕をそっと引っ張って座らせ、包み込むように抱きしめた。
『…条…君……』
"あなたが沙良ちゃんとどこまでの関係か、正直どうでもいいんです…"
凄いね、蘇枋…
それって寛大さなの?それとも自信?
俺には無理だよ。
ホクロを確認したくて服を脱がせ、下着まで剥ぎ取ったのに、もう…どうでも良かった。
「怖がらせてごめんね…沙良ちゃん。
ホント…ごめん。」
『………』
カッコ悪いねぇ…
焦って、空回って、傷つけて…
沙良ちゃんを抱き締める腕に、少しだけ力を込めた。
壊れないように、壊さないように…
side 沙良
このぬくもりを知っていた。
優しい抱擁なのに…痛みにも似た感情が溢れていて、動けなくなってしまう。
これは…
梶君や蘇枋君にされた抱擁と同じだ。
『条…君…』
されるがままになっていると、条君はスッと立ち上がり、入口まで歩いて行った。
『…っ……あの…』
ピタリと止まると、振り返ってニコリと笑いながら言った。
「沙良ちゃん…
俺…もう沙良ちゃんに会わないほうがいいみたい。
どうしたって沙良ちゃんをきっと傷つける。
自分がこんなだったなんて知らなくてさ…
すごく…戸惑っているんだけど…
またどこかで偶然会えたら…その時はよろしくね。
沙良ちゃんの事…忘れないから。」
条君は、鍵は気にしないでいいからね、というと扉に手をかけた。
『…待ってっ……』
反射的にかけより、小さく小さく見えた条君の大きな背中に抱きついた。
「……沙良ちゃん…何してるの?」
フッと笑い、条君は振り向いた。
『……私が…いつ傷ついたの?
驚いただけで…何も傷つけられてなんかない…
急に会わないなんて言わないで、って言ったの条君なのに…』
条君の顔を見上げると、涙が零れそうになった。
何で急にこんな事に…
まだネックレスのお礼もきちんとしていない。
もう会わないなんて、急にそんなの…
「傷つけられてない……か…」
条君は私をひょいっと抱き上げてベッドに向かうと、優しく降ろし、覆いかぶさるように唇を塞いだ。