【WIND BREAKER】愛なんて知らなかった(R18)
第2章 出会い
「…やっぱ沙良、笑った方が可愛いよ。」
『……ぇ?』
「いや、何も。じゃあスタートね。早速だけど、何で学校の近くにいるなんて言ったの?」
ドクン………
一瞬にして心臓を掴まれたような、息苦しさを感じた。
当然だけど、嘘はバレている。
『ぁ……ごめんなさ…』
「はははっ、よっわ。早速じゃん、沙良の負けー。」
『梅宮さんも…笑ってます。』
「え?あ、ほんとだ。なんだよ相殺かぁ。
…で?何で嘘ついたんだ。俺等の事怖かった?」
『……はい。』
失礼を承知で言った。
知らない人が怖い。
知らない人を知っていくのはもっと怖い。
怖がりで失礼な奴だとわかれば、もう関わろうなんて思わないのではないか…
そんな思いで絞り出すように頷いた。
「…見た目が怖かった?」
『……はい。』
本当はそんな事じゃない。嫌って程、見た目で判断されて傷ついてきた。"コレ"は今後も、絶対に人に見せない。
「そっか。外見はどうしようもないからなぁ…」
困った、という風にうなじを触る梅宮さん。
何か話題を変えたい。何を話したら…
『あの…ことはちゃんと梅宮さんは昔からの知り合いだった、って聞きました。家が近所なんですか?それかご両親同士が知り合いだったとかですか?』
我ながら、可も不可もない良い質問ができたと安堵した。
「いや…ことはも俺も、両親いねーんだ。
うちは俺が小さい頃、目の前で二人共亡くなった。」
『…っ………』
「母さんは妊娠しててさ、弟か妹ができるんだって…産まれるのを楽しみにしてたんだけど、二人共俺を守ろうとして事故で亡くなったんだ。…ってごめんな、こんな話急に。」
『ごめんなさいっ……私…』
「いやいや、いいよ。ガキの頃の話だし。今は二人を心配させねぇように頑張らなきゃな、って思ってるし。」
『…本当にすみません。無神経な…事をっ…』
顔が熱くなり、目に涙が溜まる。
「…っ…いや、俺の方こそ悪かった。突然こんな話…沙良、顔上げて…?」
『………』
地面を見つめながら、ふるふると頭をふった。
罰ゲームなんてどうでもよかった。
触れられたくない事に触れたのではないか…?
梅宮さんの傷を抉ったのではないか…?
それが気になって、なかなか頭が上げられなかった。