【WIND BREAKER】愛なんて知らなかった(R18)
第2章 出会い
side 沙良
まこち駅のホームで本を読んでいると、鞄の中のスマホが光ったのが見えた。
お父さんかな…?
画面を確認すると、ことはちゃんだった。写真もついている。
(ごめんね、沙良ちゃん。梅がどうしても、っていうから送っています。まだ学校かな?
ほんの少しでもお店に来られない?皆に会わせたいって。)
写真を見て驚愕する。
何て個性的な人達…
眼帯の人、髪の色が半分違う人、ピンクの髪の人、ヘッドフォンをした金髪の人、梅宮さんは…あれ?
『髪…普段は上げてるんだ。』
髪型が違うからわからなかったけれど、この髪色と満面の笑みは梅宮さんに違いない。
まずい…既読にしてしまった。
大丈夫、落ち着いて。こちらが見えているわけじゃないんだから。
文字を打とうとタップすると、ことはちゃんから電話がかかってきた。
『うわっ……』
どうしよう…
落ち着いて、落ち着いて。
大丈夫、電車の音がしても、学校の最寄り駅にいる事にしたらいいんだから。
ドキドキする胸を押さえ、深呼吸して通話部分をスライドする。
『あ……ことはちゃ』「沙良?今どこ?」
『……………』
「ことはのメッセージ見た?どこにいんの?まだ学校?
待ってるから、ちょっとだけ顔出してよ。」
想像もしなかった相手が電話に出たことに驚いて声が出ない。
『梅宮さん…ですか?』
「そうだよー、沙良今どこ?」
奥の方では、怒った様子のことはちゃんが梅宮さんを呼ぶ声がする。
『あの…私まだ…学校で…
今から1時間かけて帰るので、今日はちょっと……』
断りかけた次の瞬間…
ーー♪♪〜 3番線に、普通列車◯◯行き、間もなく到着します。お乗りの方はーー
『…………』
「あれ、この曲…今、まこち駅なの?なんだ。迎えに行く。歩いてて。」
プツリと切れた通話に、思わずホーム画面を見つめて無言になる。
『……ぇ……えーーっ…そんな……ぇっ……!?』
商店街で会ったらさすがに逃げられないだろうと駅のホームで時間を潰そうとした事が裏目に出た。
学校の最寄り駅にいたらよかったんだ…
けど最寄り駅は……学校の子達がたくさんいる…
当たり前の事に溜息が出てしまう。