第52章 鈍器
ドスッ……!
私の間近で、かなり鈍い音がした。
「グオッ……?! この、痛みは……っ?」
エンドラがそう言葉を吐きながらのたうち回った。私は勢いのまま体勢を崩してしまい、間もなくエンドラの尾にぶつかって叩き落された。
「大丈夫?」
そこで助けてくれたのがおらふとスケルトン家族だった。私はスケルトン家族二人に抱えられていた。私は大丈夫と頷いてからすぐにエンドラへと振り向いた。
「まさかこんな能無し人間に、俺様がやられるとは……」
エンドラは地面にぐったり倒れながらも、なおもぶつぶつと悪態を吐き続けた。
私がおもむろにエンドラへ近付くと、割り込むようにぼんじゅうるが前に出た。
「あのなぁ、エンドラ! さっきからずっとユメちゃんのこと馬鹿にしてっけど!」ぼんじゅうるの声は怒っていた。「ユメちゃんは俺のこと助けてくれたすっごくいい子なんだぞ! ずっと一生懸命だし、いっぱい考えてくれてるし、めっちゃ優しい女の子なんだからな!」
「ぼんじゅうるさん……」
そう思っていてくれていたなんて。
しかしエンドラは何が可笑しいのかゲラゲラ笑っては痛みで咳き込んだ。それからまた、話し出したのだ。
「だが俺様は、大巫女の力がない限り、誰も封印することは出来ない……ハハハハハ、残念だったな! いくらその杖が覚醒していようと、俺様、は……」言葉は途切れた。「何っ……能無しの人間に、この俺様がっ?!」
エンドラは、自分の手足が徐々に崩壊していることに今気付いたようである。エンドラはまさかそんなことがと立ち上がろうとしたが、すでに立ち上がる力は残っていないようで呆気なく地面に倒れ込む。
「なぜだ……なぜこの俺様が、貴様に……貴様らなんかに……!」
と今も尚悪態をつくエンドラの目の前に私はしゃがみ、頬に手を当てた。