第50章 もう一度
「行け、みんな!」
おらふの掛け声で、一斉になって蜂の群れと蜘蛛がエンドラに飛びかかる。そう何度も同じ手には掛かるかとエンドラは鉤爪を振り回したが、小さな蜂は小回りがよく利き、上手くかわし続けている。
エンドラが足で踏みつけようとすれば、蜘蛛は素早く糸を吐いて緊急回避。蜂も蜘蛛もエンドラにとっては小さいので、命中させるのが難しいみたいだ。
ならばと号令の主を潰してやると、エンドラの狙いがおらふに向いたところでおんりーがガンナーで銃弾を浴びせて攻撃を阻止する。エンドラの口ぶりからしておんりーへのヘイトは高いらしく、地形を破壊しながら猛突進したから物陰にいる私もふらついて危うく転ぶところだった。
声を掛けて駆けつけたいところだが私はグッと堪える。おんりーが提案してくれた作戦を確実に実行するため、私は柱の後ろで隠れているのだ。
それでも、途中ぼんじゅうるが周りにいる背の高い魔物に追い掛けられて助けてと叫んでいた時は少しヒヤヒヤした。すぐには嵐を起こして自分で片付けてはいたのだが。あの背の高い魔物は普段は大人しいが、目を合わせると急に襲ってくるというのだから油断出来ない戦場だ。
と目を離してた一瞬に、ドォンと大きな音がして見やると、MENが樽爆弾でエンドラを怯ませている光景が目に映って私は息を飲んだ。私の出番は、そろそろのはずである。
「ぼんさん、僕が魔法で動きを止めている間に勇者の剣を!」
「ずっと魔法で止めててよ?!」
「無理ですよ! だから早く!」
ドズルが見えない魔法の力でエンドラの動きを止めていた。ぼんじゅうるが持つ勇者の剣はエンドラの体力を大きく削る偉大な力を秘めている。伝説ではあの勇者の剣でトドメを刺し、その後大巫女が杖を使って封印をするのだが、今私たちが目指しているのは封印ではない。討伐だ。
「喰らえっ!」
ガンッと鈍い音がする。私は見ていられなくて思わず目を瞑ってしまったが、間髪入れずにこちらへ、とおんりーに手を引かれて私は物陰から飛び出した。痛みに呻くエンドラを視界の端に、私はおんりーに抱えられたまま上空へ飛び上がった。
おんりーは、ガンナーフックを使って空を飛んでおり、私はおんりーにしがみついたまま眼下のエンドラを睨みつけた。