第56章 思わぬ結末
「さーて、配信も終わったしそろそろ寝るか」
声が聞こえた。なんの話をしているのかと聞き耳立てながら目を開けると、真っ暗な世界で私はギョッとする。
ここはどこ? 私は困惑する頭で体を起こすと、見知らぬ誰かの部屋のベットにいることが分かった。
「えええっ、誰だれ?!」
そして、声をあげて驚く目の前の男性。
「あ、の、私……」
気付いたらここにいた、という言い訳がすぐに通じるはずもないと私も慌てながらベットから下りた。目の前の男性は見たこともない人で、私この人と何してたんだろうと不安と不審で心がいっぱいだった。
「え、何……本当に誰なの……?」
目の前の男性も落ち着きを取り戻して恐る恐る私に訊ねた。私も貴方が誰なのか分からないけれど、なぜなのか男性の声には聞き覚えがあった。とりあえず私は、名乗ることにした。
「私は、大巫女王国第一王女、ユメです」
「……え?」
私がそう名乗ると、男性は分かりやすく驚いた。そこで私は、そうか、あの青い果実で誰かの家に飛ばされる魔法に掛けられたんだと思い込むことにした。そうでないとこの訳の分からない状況に説明がつかない。もしそうでもないのなら、これはきっと夢の中だ。
「いやいやまさか、あの時のユメちゃんな訳……」
と男性がぶつぶつと言うので、私は飛びつくように問い詰めた。
「私のことを知っている方ですか?」
私は未熟者とはいえ一国の王女なのだから、名前だけ知っている人も多いのだろう。あのサンディ王国もそうだったし、きっとそうに違いない。
「知ってるっていうか、多分……」
と言うなり、男性は一瞬どこかに行き、また戻って来た。なぜか彼は黒い眼鏡を掛けていた。私はその眼鏡を見、何かを思い出そうとした。
「え……そのサングラスは、ぼんじゅうる様?」
すると、彼ははにかんだように笑うのだ。
「ぼんじゅーる、ぼんじゅうるだ、どーもです」
私は、今度は彼らがいる異世界に、飛ばされたようである。
おしまい