第9章 吐露Ⅰ
[はいどうぞ]
[あと…これ条くんのもらったりんご]
[ありがとう…ちゃん]
[う、うん…大丈夫…]
[………………………………]
お茶を持ってきたのはいいものの
(き、気まずい…………)
あの事件のこともあって何を話していいかわからない
普段は何もなくてもすぐ喋れたはずなのにこんなに話しかけられるのに迷うのも初めてだった
(はぁ……どうしよ……)
(なんて話したら………)
正直言うと気まずくて仕方ない
けれど一番は条くんだろう
向かい側に座っているけど条くんは黙々とりんごを食べている
無理もない
(このままも駄目…だよね……)
(とりあえず気楽に…気楽に…)
何でもいい少し喋らないと
そう思っていたけれど
(あ………れ………)
頭がぐるぐるする 汗が止まらない
何を話せばいいんだっけ
ごちゃごちゃする
頭の中は色んなもので溢れていた
話さないと
このままだと飽きられてしまう
嫌われるよ
悪魔の囁きのような声
(私………)
昔から何一つ変わっていない
弱いところばかりで治そうとしていない自分に呆れる
(変われていないな…私)
どうしたらいいんだろうか嫌になってきてうつむいてしまう
そんな時だった
[ちゃん]
[俺といる時くらい無理しないで]
条くんから思いがけない言葉が聞こえた