第9章 吐露Ⅰ
[十亀条Side]
じいちゃんは何かお願いしたいのだろうか
沈痛な面持ちで俺を見ている
[あ〜…家の前でする話じゃあねぇな…]
[っ…すまんな…!]
[じ、じいちゃん…謝ることないよぉ]
[っ…そ……の……]
(ちゃんを知りたい)
聞こうとしたけど
[まぁ…とにかく入ってくれや]
[う、うん…]
タイミングを失ってしまったがまずは入ってからの方よさそうだ
じいちゃんがカラカラと音良く玄関の扉を開ける
ここに来るのも数ヶ月ぶりだ
ほとんど鶴の湯で会うことがほとんどだったものだからここに寄ることは稀に近い
久々に来れていなかったが落ち着くところだ
[お〜いばあさん]
[…あらおじいさん…と条くん…!]
[ばあちゃんこんにちは〜]
いつもと違って暗い声色の様に思えたが俺に気づくとたおやかな笑顔を向けてくれた
ここ数週間会うことがなかったが
少し元気がないようにも思えたけど姿を見ることができて安心していた
[今日はどうしたのかしら?]
[坊主からりんごもらってな]
[礼に茶でも飲ませようかと思ってよ]
[あらあらありがとうね条くん]
[よかったら上がってちょうだいな]
嬉しいのか顔がぱあっと明るくなっている
ばあちゃんがそう言ってくれたので好意に甘えて上がろうとしたその時だった
[っ…条くん……?]
聞き間違えるはずがない
この優しい声
(……………ちゃんだ…)
俺は声が出た先を見てみると
ちょうどお風呂から上がったのか髪が濡れているちゃんだった