第44章 ※悲哀
[そうかよかっ…]
[お前]
[え?]
そんな真剣な顔でまじまじと見つめられると照れてしまう
どうしてなのか不思議に思っていると
[なんで泣いてんだ]
(え 嘘)
(泣いてるって)
最初何を言っているのか分からなかったものの頬に触れると濡れた感触がある
間違いない 涙だ
それに気づいた途端ポロポロと真珠のように零れ落ちて留まることを知らない
悲しい
辛い
二つの感情が怒涛のように胸の内に押し寄せてくる
一点に留まるところを知らずに
(なんで)
自分でも理解できない
散々泣いてきたはずなのに
(どうして 今なの)
[…っ…ご…ごめんなさい…す、すぐ泣き止むので…]
急いで手の甲で涙を拭う
はやく泣き止まないと
これ以上梶さんに心配かけてばかりいられないのだから
[……あ、あはは]
[変…変だね…私]
いい大人が聞いて呆れる
突然泣くなんてまるで子供だ
この場からいなくなってしまいたかった
なんて幼稚な考えに浸っていると慈しむように頬に手を置かれる
[梶さ………]
[無理して笑わなくていい]
[俺の前だけでは無理するな]