第44章 ※悲哀
[梶さ…どうし…]
どうしてここに
その疑問が頭に浮かぶ
もしかして待ってくれていたのだろうか
[お前…!こんな雨の中何してんだ!]
[あ……の]
(どうしよ…)
言葉が上手く出てこない
どう話せばいいのか分からないから
それに
(こんな姿見られたくなかった)
見られずに帰れればよかったのに知己と会ってしまうとは
今の私はとても
惨めに見えることだろう
(…………………っ)
ぎゅっと自分の服を握りしめる
梶さんの顔がまともに見れない 呆れているだろうから
[………ったく…]
[取りあえず羽織れ]
[あ]
(暖かい)
彼の学ランが体を包み込む
雨の中で冷えていた体が徐々に熱を帯びてくるも
[…一体どうしたんだ]
[え……あ]
その一言でふと現実に戻される
気になって当然だ
こんなずぶ濡れでここにいるのか謎だろうしけれど
(いいたくない)
彼から逃げてきたなんて
それも獅子頭連の副頭取に
いい顔はしないだろう 敵地のチームなのだから
(…誤魔化すしかない)
騙すようで心苦しいがそう言うしか方法はない
意を決して口を開くも
[その…]
[…………きゃぁ!]
突然横抱きにされまるで御伽噺に出てくる王子様とお姫様のような構図だ
軽々と持ち上げ平然とした顔をしている
[え……?え……!?]
分からない 今日は本当に理解が追いつかない日だ
私はただ落ちないよう彼の首に手を回すしかない
[行くぞ]
[え……!そのど…]
行くとはどういうこと?頭が追いつかない
一体何処へと聞こうとするも答えはすぐ返ってくる
[俺の家だ]