第44章 ※悲哀
[………はぁ…はあ……]
[……はっ]
どこまで走ったのだろうか
(……ここは)
雨に打たれて衣服がビショビショに濡れていることにも気づかぬまま高架下まで走ってきたらしい
[すぅー………はぁー……]
まずは息を吸って吐く
荒い呼吸を落ち着かせなければ
(条……くん)
無我夢中だった
あの場から離れたくて 彼に見向きもせず走り去ったのにも関わらず
ほんの期待をしていた私が馬鹿らしくなってしまう
(追いかけてくれるなんて)
何を考えているんだろう
"あんな事"をされておいて嫌になってるはずなのに
(……なんで)
(私………)
[っ…………ぅ]
せき止めていた雫が溢れて止まりそうにない
どうしてこう思うのか分からない
思考がぐちゃぐちゃで限界だった
(…帰ろう)
ここにいても辛いことが鮮明に甦ってしまう
ふらふらとした足取りで家に向かおうとした途端
[……おい!お前!]
(え)
駆け寄ってくる足音が聞こえる
誰が私を呼ぶの
涙と雨でうまく視界が見えない
(………?誰……?)
ほっといてほしかった
言い方が悪いのは申し訳ないけどそこまで構っていられる余裕はないのだから
(…私じゃないかも)
もしかしたら聞き間違いかもしれない
私の名前を呼ばれたわけではないのだから
[おいっ!何してんだ!!]
[………梶…さん…?]